性感染症(STD)とは
実際に、女性の15～19歳で21人に1人が、20～24歳では16人に1人が、性感染症に感染していると報告があり、感染者数が増加傾向にあります。
主な性感染症
クラミジア感染症、淋病、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス腟炎、梅毒などがあります。いずれも早期の治療が重要な病気であり、しっかり治るまで治療することが必要です。
クラミジア感染症
クラミジアトラコマティスという細菌の感染によって発症します。目の疾患であるトラコーマも同じ細菌によって発症します。また、クラミジアはセックスによって腟から子宮に感染しますが、オーラルセックスではのどに感染してのどの炎症を起こすこともあります。
症状
潜伏期間は約3日～1週間です。おりものの増加、下腹部痛、不正出血、右上腹部痛などを起こすこともありますが、感染しても8割以上に自覚症状がないとされています。感染に気付かないまま進行すると卵管炎や骨盤内感染症を発症し、不妊症や子宮外妊娠の原因になることもあります。出産まで気付かずにいると新生児に感染して結膜炎や肺炎を起こす可能性もあります。
検査と治療
腟や子宮などからおりものを採取して調べる抗原検査と、血液を採取して抗体を調べる検査があります。抗生物質による治療を1～2週間続けることで治せます。のどへの感染がある場合も、抗生物質による治療が可能です。
淋病
淋菌という細菌による感染症で、セックスだけでなくオーラルセックスやキスでも感染します。男性は排尿痛などの強い症状が現れることが多いのですが、女性は自覚症状がほとんどないこともあり注意が必要です。
症状
潜伏期間は2日～1週間です。男性は尿道口のただれ、膿、激しい排尿痛などが起こり感染に気付きやすくなっています。女性は、黄色いおりもの、外陰部の腫れ、かゆみなどを起こすこともありますが、症状がほとんどないこともあります。パートナーに症状があった場合、ご自分に症状がなくても感染している可能性が高いため、必ず受診してください。淋菌に感染して進行させてしまうと、淋菌性腟炎、子宮内膜炎、卵管炎などを起こし、そこではじめて強い腹痛が起こって感染に気付くケースもあります。また、不妊症や子宮外妊娠の原因にもなりますので、早期の治療が重要です。なお、のどに感染した場合には、淋菌による咽頭炎を発症します。
検査と治療
おりものを採取して淋菌の有無を確認します。抗生物質の注射や点滴で治療します。治りにくいこともあるため、必ず治ったかどうかの判定をします。
性器ヘルペス
ヘルペスは、目・口に感染することがありますが、性器などにも感染することがあります。性器に単純ヘルペスウイルスが感染したものが性器ヘルペスです。性器ヘルペスはほとんどが性行為によって感染するため、性感染症に含まれています。ヘルペスウイルスは症状が消えても潜伏して残るため、免疫力が低下すると再発することがあります。また出産時に性器ヘルペスの症状が起こっていると、産道で新生児に感染する可能性があります。近年、性器ヘルペスは20代の感染が増加していると指摘されています。
症状
初感染後、3～7日の潜伏期間があって発症します。発熱や倦怠感が起こり、次いで米粒程度の水疱ができます。女性は外陰部や腟に水疱ができ、男性は亀頭や包皮にできます。水疱が破れると潰瘍になり、刺激で痛みを感じます。初感染時が一番症状が強く出ることが多く、強い痛み、排尿痛を生じ、発熱、頭痛、ヘルペス脳炎になり、場合によっては入院になるケースもありますが、再発ではそれほど強い症状を起こすことはありません。
検査と治療
婦人科であれば、水疱や潰瘍の状態を観察するだけで診断できますが、他の疾患が疑われるなどより正確な診断のための血液検査を行うこともあります。抗ウイルス剤を使った治療で症状を緩和できます。軟膏や内服薬、注射などがあります。ただし、ウイルスを完全に排除することは難しいため、潜伏したウイルスによって再発を繰り返すこともあります。
再発を起こしやすい場合は、持続療法の提案、または再発をしたときにすぐ飲めるお薬をお渡しする治療をご提案します。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルスによって起こる性感染症です。子宮頚がんの原因となる高リスク型のヒトパピローマウイルスとは異なる低リスク型によって起こる疾患です。
症状
潜伏期間は様々ですが、感染から2～3か月で症状が現れることが多くなっています。弾力性のあるイボが外陰部や肛門周辺にでき、徐々にイボの数が増えて大きな塊になり、カリフラワーや鶏のトサカのようになることもあります。かゆみやヒリヒリする感触、ほてり、性交痛などを生じることもあります。
検査と治療
特徴的なイボ状のできものを確認して診断できます。
数が少なく小さい場合は軟膏やドライアイスによる凍結が有効なことがあります。サイズや数によっては、レーザー治療や電気メスによる治療、手術による切除が必要になります。完治まで時間がかかることも多いのですが、地道に治療を続けることが重要です。
（当院では軟膏のみの治療で、レーザー治療や手術などは対応しておりません。）
トリコモナス腟炎
寄生虫のトリコモナス原虫が性行為によって腟内に入って生じます。トリコモナス腟炎になると腟の自浄作用が低下してしまうため、他の感染症にかかるリスクも上昇します。放置していると様々な性感染症を合併しやすいため、早期の治療が重要です。
症状
外陰部のかゆみ、黄色や緑がかったおりものが現れます。おりものは泡状になることもあり、強い臭いを伴います。外陰部のただれや腟からの出血などを起こすこともあり、進行すると尿道炎や外陰炎によって排尿痛や歩行時の痛みを生じます。
検査
おりものや尿を顕微鏡で観察して、トリコモナス原虫の有無を確認します。淋病と違い男性にはほとんど症状がないため、感染に気付かない男性によってうつるケースが多くなっています。女性が感染に気付いた場合は、再発を防ぐためにも必ず男性にも検査を受けるようお伝えください。
治療
フラジール(メトロニダゾール)腟錠とフラジール内服薬を2週間程度併用して治療します。腟錠だけでは尿路に侵入して潜伏しているトリコモナス原虫を駆除できないため、内服薬の併用が不可欠です。
梅毒
トレポネーマの感染によって発症する性感染症です。抗生物質の登場によって効果的な治療が可能になり、日本ではほとんど見られなくなりましたが、最近になって感染者が増加傾向にあります。梅毒は主にセックスやキスなど皮膚や粘膜の小さな傷から感染しますが、輸血による感染や胎児への母子感染を起こすこともあります。
症状
潜伏期間は10日～90日と長く、一般的に感染から3週間程度で発症するとされています。進行によって第1期から第4期に分けられ、それぞれ特徴的な症状を起こします。現在では第2期までに発見されて適切な治療によって治っており、第3期以降の症状を起こすケースはほとんどありません。
第1期
感染から3週間程度で感染が起きた場所に初期硬結を起こします。その後、周囲が隆起して全体に硬い硬性下疳という潰瘍になります。痛みがなく数週間で消失しますが、瘢痕が数か月間残ります。
第2期
感染して3か月経過した頃に、梅毒疹が感染した場所から広がりはじめ、梅毒性ばら疹、丘疹が全身に生じます。梅毒ばら疹は、ピンクや薄紅色の発疹です。また、不均一に頭髪が抜ける梅毒脱毛症を起こすこともあります。こうした症状が数週間から数か月継続します。
第3期
感染して2～3年経過すると、ゴム腫という結節が筋肉・内臓・骨などにできて、徐々に大きくなっていきます。
第4期
感染10年以上経過すると、心臓血管系、中枢神経系が侵されて、死に至る可能性があります。
検査と治療
血液を採取して感染の有無を確認できますが、感染後6～8週間経過しないと正確な結果が出ない可能性があります。そのため、第1期の症状がある場合には再検査が必要になる場合もあります。
抗生物質の内服や注射などによる治療で治すことができます。パートナーにも検査を受けるように伝え、しっかり治すことが重要です。
性感染症の原因
性感染症の原因には、細菌やウイルスなどがあり、1回の性行為によって感染することも珍しくありません。なお、普通のセックスだけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。
性感染症の症状
おりものの臭い、色、質感などに変化が起こることがあります。外陰部のかゆみ、できものなども性感染症が疑われます。ただし、性感染症は自覚症状に乏しいものが多く、ほとんど自覚症状がないこともあります。また、男性には症状がある性感染症で、女性にはほとんど自覚症状を起こさないものもあります。感染に気付かないまま放置していると不妊や赤ちゃんへの感染を起こすこともあります。
性感染症の検査と治療
おりものの採取や血液検査で診断が可能です。
治療は、病気に合わせて腟錠、腟坐剤、軟膏、内服薬などが使われます。治りにくい性感染症や再発を繰り返す性感染症も存在し、2週間から数か月かかることがあります。医師の指示を守ってしっかり治療しましょう。
また、性感染症であることがわかったら、パートナーにも必ず検査や治療を受けるよう伝えましょう。片方だけ治しても、もう片方が治療を受けていないと再感染を繰り返してしまいます。また、しっかり治るまで、セックスは控えてください。
当院の検査コース
| 検査項目 | 料金（税込） | |
|---|---|---|
| 性病検査 | クラミジア、淋菌（膣より採取）、梅毒、エイズ、B型肝炎、C型肝炎 | 11,000円 |
| 上記に追加 | 咽頭クラミジア、咽頭淋菌 | 6,600円 |
